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2023.03.12-シリコンバレー銀行破綻の原因・・銀行の通常運用とリスクと今回の原因のまとめ

■シリコンバレー銀行破綻の原因・・銀行の通常運用とリスクと今回の原因のまとめ

2023年3月10日、米連邦預金保険公社(FDIC)はアメリカ・シリコンバレー銀行を管理下に置き、事実上の破綻を宣告した。

なぜシリコンバレー銀行が破綻したのか、その原因を整理するため、通常の銀行の運用、リスク、今回の破綻の原因、という順序で整理する。

経済の専門家から見ると、もっと他にも様々な要素があると思われると思うが、以下の内容は、あくまでも基本的な概念を整理したものであると考えていただきたい。

■銀行の「通常運用」 

預金の運用

銀行は、預金者からの預金を預かり、利息を預金者に払い、集まった預金を資金として、様々な資金運用を行い、収益を得る。 

銀行の資金運用

銀行は、集まった預金を資金として、様々な資金運用を行い、利益を得る。

預金の金利は短期金利なので少額であり、資金運用の金利は長期金利が多く金利が高いため、その差が銀行の利益となる。

普通預金は、預金者が望めば即時に返済される代わりに金利が安い。
定期預金は、一定期間は引き出せない、一定期間引き出せない代わりに金利が高い。
銀行からの融資・投資は、返済・元金回収までが長期となる代わりに金利が高い。

※一般的には、期間が1年未満の金利を短期金利、1年以上の金利を長期金利という。 

銀行資金の維持

銀行は、上記の通常の運用以外に、必要であれば債券売却により現金を回収し、銀行資金を一定の水準に維持する。

■様々な要因によるリスク 

「社会的評価」預金の増減への影響

銀行の決算状況、今後の経営方針の公表、株価の変化、スキャンダル、風評など、様々な要因により銀行に対する社会的評価は変化する。

社会的評価の変化は、預金者からの預金の増減に影響を及ぼす。

「景気」資金運用の循環への影響

景気の状況により、投資先からの返済状況が変化する。

景気が良くなると返済・元金回収は好調に進み、景気が悪化すると返済の滞納が増え、元金回収が不調となる。

「政策金利」所持している資産価値への影響

政策金利の変化により市場の金利も徐々に変化し、所持している資産である債券などの価値が相対的に変化する。

政策金利が上がると市場の金利が徐々に上昇し、既に所持している債券などは、相対的に価値が下がる。

■様々な要因による資金繰りの悪化

銀行の資金繰りが悪化する要因としては以下の事項が考えられる。

「社会的評価の低下」預金の減少

社会的評価が低下すると、預金者からの預金が減り、預金の回収が増え、銀行資金となっていた預金分が減る。

「景気悪化」資金運用の不調

景気の悪化により、返済の滞納が増え、元金回収が不調となり、資金運用による利益も減る。

「政策金利の利上げ」資産価値の低下

政策金利の利上げにより、所持している資産である債券などの価値が相対的に低下する。

■シリコンバレー銀行破綻の原因は「急激な利上げ」

1年間に0.25%から5.00%に利上げ

シリコンバレー銀行の破綻は、FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を急激に利上げしたことが原因であると考えられる。2022年3月から2023年3月の1年間に、0.25%から5.00%に上昇している。

政策金利の急激な利上げにより、様々な変化が連動し、急激な資金移動が起こり、銀行資金流出に歯止めがかからなくなってしまったと考えられる。

※FRB(米連邦準備制度理事会):アメリカ合衆国の中央銀行の最高意思決定機関。日本国の日本銀行に相当する。

利上げにより企業の先行き不安感増加

政策金利の利上げにより企業の資金調達の必要性が増し、先行きの不安から預金回収が増加した。

債券売却による損失から社会的評価の低下

市場金利の上昇により所持している債券の売却価格が相対的に低下したが、資金調達の必要性から、たとえ安くても債券を売却せざるを得ない状況になったため、債券を安く売却した損失が積み重なり、社会的評価が低下し、さらに預金回収が増加した。

■シリコンバレー銀行のダメージが大きかった理由

政策金利の利上げは、各銀行に共通に影響を与える事項であるが、なぜシリコンバレー銀行が、より大きくダメージを受けてしまったのだろうか。

理由1「顧客が偏っており行動が似通っていた」

シリコンバレー銀行は、顧客にベンチャー企業・スタートアップ企業が多かった。そのことにより、銀行の評価に関連する情報が伝わったときの、預金移動などの行動が似通っている人が多かった。

そのため、利上げによる債券価格低下による損失額が公表されたときに、資金移動などの対応をする人がたくさんいた。

理由2「債券を大量に保有した」

2019年頃、シリコンバレーの資金調達が大変好調で、バランスシートが3倍程度になっていた。そのため、豊富な資金により債券を大量に買い入れ保有した。

そのことにより、政策金利の利上げによる債券の価格低下によるダメージを大きく被ることとなった。

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