【歴史】日本が無謀な戦争をした原因【1】政治体制の欠陥

◆日本が無謀な戦争をした原因【1】政治体制の欠陥「統帥権独立」「帷幄上奏権」「軍部大臣現役武官制」

大日本帝国の政治体制は、統帥権が天皇にあることが憲法に明記され、様々な法規が作られ、太平洋戦争の時期には、以下の図のような構造となっていた。
陸海軍を指揮し統率する権限「統帥権」は、すべて天皇直轄となっていた。

帷幄上奏権・軍部大臣現役武官制から産まれた「魔法の杖」

昭和の日本の政治体制は、参謀本部条例帷幄上奏権軍部大臣現役武官制により、軍部の決定が内閣や議会より優先されるという状況になっていった。

統帥権の独立

陸軍の参謀本部、海軍の軍令部は、明治11年の「参謀本部条例」が制定されたことにより、天皇の裁可があれば、内閣や議会の承認がなくとも軍事方針を決定することができた。

帷幄上奏権
陸軍の参謀本部、海軍の軍令部は、天皇に直接、上奏(天皇に意見を言う)することが認められていた。

軍部大臣現役武官制
軍部大臣に陸海軍の現役の武官が就く制度である。
内閣が陸海軍の方針に逆らうと、陸海軍は内閣の一員である軍部大臣の就任を拒否した。軍部大臣が欠員となる内閣は成立しないため、内閣は総辞職に追い込まれた。

「魔法の杖」の成立
帷幄上奏権と軍部大臣現役武官制により、陸海軍は内閣に介入されずに方針を通し、議会は軍の方針の通りに予算を承認せざるを得なかった。
陸海軍は、国民から集めた税金を思い通りに使い、戦争を続けることができた。
これを作家の司馬遼太郎は「魔法の杖」と表現した。

◆昭和天皇の姿勢「君臨すれども統治せず」

昭和天皇は「君臨すれども統治せず」の原則を貫いた

大日本帝国憲法・第十一条「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」の規定から、統帥権は昭和天皇が持っていた。しかし昭和天皇は「君臨すれども統治せず」の原則を守り、質問や意見を言うことはあるが、最終的には軍の方針の通りに承認した。それにより、陸海軍は独断で軍事行動をすることが可能となった。


▲昭和天皇

昭和天皇の後悔

昭和3年(1928年)に発生した張作霖爆殺事件に対する田中首相の対応に不満を持った昭和天皇は、田中首相の責任を追及し叱責した。この後、田中内閣は総辞職し、田中首相は天皇に叱責されたことを重く受け止め心に病み、その後、狭心症で死去した。

昭和天皇は、臣下を叱責したことにより、結果的に死に追いやったのではないかと反省し、これ以降は、臣下の提案に質問や意見は言うものの、最終的には提案の通りに承認した。

昭和天皇が自分の判断で統帥権を行使したケースとして知られているのは、昭和11年(1936年)の二二六事件の反乱軍を鎮圧したときと、昭和20年(1945年)の終戦の聖断のみであった。

◆関東軍の独断の軍事行動により満州事変・日中戦争・太平洋戦争へとなだれこんだ

関東軍が独断で満州事変を起こす

昭和6年(1931年)9月、中国・満州の奉天郊外の柳条湖において、関東軍の板垣征四郎と石原莞爾が独断で軍事行動を開始し、奉天、長春などの南満州の主要都市を占領した。

日本の朝鮮駐屯軍の一部の部隊も合流し、翌年2月までの間に、チチハル、錦秋、ハルビンなどの満州各地を次々と制圧してしまった。


▲石原莞爾・・満州事変を立案し実行した。

日本政府は関東軍の行動を制止できず追認

日本政府は当初は満州での拡大を抑える方針だったが、軍事行動の拡大を抑えることができず、仕方なく追認するというありさまだった。

関東軍は満州国を建国・日本政府は制止できず

関東軍は、制圧した地域を中国政府から切り離し「満州国」として独立国を建国させることを画策した。日本政府は、中国の主権を侵害するこの行為に反対したが、関東軍は次々と満州の支配を進め、清朝最後の皇帝溥儀をトップに据えた「満州国」の建国を宣言させ、事実上の支配権を握ってしまった。


▲満州国は日本の3倍以上の面積だった

満州事変から陸軍の独断行動が増え15年戦争に突入

満州事変で日本本土より広い面積を制圧したという軍事的成功により、陸軍はますます独断の行動が増え、中国での勢力拡大を進めるようになった。日本政府は、陸軍の独断行動を制御することが困難となり、陸軍の独断行動を追認することが増えていった。

この満州事変が、アメリカの反感を買い、国際的に孤立し、さらに日独伊三国同盟の締結により米英との敵対が決定的となった。満州事変は「15年戦争」のきっかけとなり、日米開戦に至る原因ともなった。

◆【参考】現行憲法では自衛隊の最高指揮監督権は内閣総理大臣が持つ

現状の日本国憲法では、自衛隊は、内閣総理大臣の命令がなければ軍事行動等の重要な任務に関わる行動は一切できない。
また、三権分立の原則から、内閣、国会、裁判所の三権は、それぞれがチェックし合い、どこも暴走できない仕組みとなっている。

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