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力道山「ルール内でできる限りの荒わざを取りかわすことが本当の真剣勝負だ」

■力道山が大相撲からプロレスラーに転身


▲力道山

力道山は1950年に大相撲を廃業した後、建設会社で働いていたが、日系人プロレスラー・ハロルド坂田の勧めでプロレスラーに転向した。
1952年2月3日、力道山はアメリカに渡り、日系人レスラー沖識名からプロレスの指導を受け、厳しいトレーニングをこなし、試合にも出るようになった。

力道山は当初は相手をつぶすような試合をした。

1952年2月17日、アメリカ人レスラーであるチーフ・リトル・ウルフと対戦したときのことを、力道山は自伝で以下のように記している。

■力道山自伝より

ゴングが私を闘争に追いやった。
ヘッドロックで私はチーフをしめあげた。
あとはもう無我夢中(中略)私は張り手で渡り合い張りとばした。

チーフがおびえた表情をしたのを、いまでもはっきりおぼえている
(中略)こっちは殺し合いじゃ負けないという自負心がある。
張って、なぐって、投げとばした。
そしてリングにはい上がろうとするのを何度もけりとばして落っことした。
私のレスリングには攻撃があって守備はなかった。
チーフは"ウルフ"(狼)のようなどんよくな闘争心はかけらもなくなり追いつめられた泥棒猫のように萎縮した
私はフォールで勝った。
しかし自分の勝利よりも、なんとだらしのないやつだと軽べつする気持ちのほうが強かった。

この試合で力道山は、相手をとにかくパワーで圧倒し、おびえさせ、萎縮させ、途中からまともに相手にせず、軽べつしていた。
とにかく相手を圧倒して勝つことしか頭になかった。

力道山は沖識名の指導をすぐには理解できなかった。

力道山の試合ぶりを見て、コーチの沖識名は力道山に注意した。

「リキドーザン、勝つばかりがプロ・レスリングのすべてじゃない。プロ・レスリングはお客さんがあってのものだから・・・」(力道山自伝より抜粋引用)

しかし、力道山はすぐには理解できなかったらしい。これについて力道山は次のように述べている。

(沖識名の言葉は)手加減とかスタンド・プレーとかを誇張する意味ということはようやくわかったが、私はそれに妥協することを許さなかったし、断固として排斥した。(力道山自伝より抜粋引用)

「力道山・木村政彦 vs シャープ兄弟」が大ヒット

1954年2月19日、力道山は日本で本格的なプロレス興行を行い、テレビ放送の効果もあり、日本中に大ムーブメントを巻き起こした。
日本ではこれより以前からもプロレス興行のようなものはあったが継続的ではなく、実質的に力道山がはじめたプロレス興行が日本のプロレスの始まりと言ってよい。

このプロレス興行では、「力道山・木村政彦 vs シャープ兄弟」が黄金カードであり、大ヒットした。
木村政彦がシャープ兄弟の攻撃に耐えて試合をつくり力道山にタッチし、力道山が満を持して空手チョップで外国人をバッタバッタとなぎ倒した。
これが敗戦後の日本国民を熱狂させ、どれほど日本人の励みになったか計り知れない。

「力道山vs木村政彦」が多くの議論を呼んだ。

力道山のプロレス興行は大成功だったが、木村政彦は不満を持っていた。
かつては最強の柔道家といわれた自分が、相撲を廃業してプロレスラーに転身した力道山の引き立て役になっているのが我慢ならなかった。

木村は「プロレスはショーだ。真剣勝負なら私は力道山に負けない。」(趣意)という力道山に対する挑戦状ともいえる発言をし、日本中が大騒ぎとなった。
その後、1954年12月22日、日本選手権「力道山 vs 木村政彦」が行われた。

試合では序盤は投げ技の応酬が多く通常通りの試合が進行しているように見受けられた。
しかし、木村の蹴りが力道山の下腹部の急所に当たり、カッとなった力道山は、空手チョップ、張り手、キックを連発し木村をKOしてしまった。木村の出血で凄惨な試合となり、会場がシーンとなった。


▲力道山 vs 木村政彦

■力道山が反省から得た信念

この結果について力道山は以下のように述べている。

私は木村七段を打倒して日本選手権を獲得したが、はたして血を呼んだこの試合に対してジャーナリズムの風当たりは強く、世間の目も批判的であった。
そして私は反省した。私としてもけっしてあと味のよいものではない。
興奮してついあんな結果になってしまったが、どんな場合でも感情的になって試合をすることは邪道で、その点、木村君にはすまなかった。
そして結論として、

「ルール内でできる限りの荒わざを取りかわすことが本当の真剣勝負だ」

ということをさとった。
私はそれを自分の信念とすることに決めた。
世間もいつかは私の信念を認識してくれるだろう。(力道山自伝より)

【出典】『力道山・空手チョップ世界を行く』(力道山自伝)

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